無差別八方美人?

全然無差別じゃないおじさん、はてなブログに引越し中です。

小説

うつのみこ日誌 弐

のんびりと2巻の半ばへ到達した宇宙皇子。 なんと言っても今回は”魚養”と”大津皇子”です。 ※初っ端のカラーページにドーンと格好良い魚養 本当に久しぶりなので、あぁこんな奴も居たなと思い出しながら読み進めていますが、”小角”のやり方に疑問を感じて金…

うつのみこ日誌 壱

楽しく休みを満喫していても、何かの拍子に思い出してしまう宿題のように心残りだった”藤川桂介”さんの「宇宙皇子」を今度こそ本腰を入れて読むことに決めた。 あれはそう、僕が中学生の頃だったろうか?二人いる姉のうち、上の姉の本棚で見つけたのが最初の…

ハードボイルドというより、ソフトボイルドかもかも「暗闇・キッス・それだけで」森博嗣(著)/集英社

僕は本を読む人間としては非常に偏っていて、更にその量も少ない。 だから「これがハードボイルド!」と、いう定義は僕の中で一つしかありません。 そう、亡き”打海文三”ティストです。 具体的に打海文三さんの文の何処がハードボイルドなのか?と聞かれたら…

純粋な華は血を欲す「サイタ×サイタ」森博嗣/講談社

『「キレイニサイタ」「アカクサイタ」謎めいた犯行声明をマスコミに送りつける連続爆発事件の犯人、通称・チューリップ爆弾魔。その犯行が報道される中、SYアート&リサーチに持ち込まれた奇妙な素行調査。対象者―佐曾利隆夫に以前の同棲相手へのストーキン…

何処かに有りそうで、やっぱり無いのが人生の答え「マインド・クァンチャ」森博嗣/中央公論新社

実に幸せな読後感であります。別に自分がその境地に達したわけでも無いのに、とうとう旅の終着を迎えたゼンノスケを見ていたら、清々しい気持ちでいっぱいになりました。 ※刊行された4月に相応しい素晴らしさ。こんな写真撮りたい... 主人公であるゼンノス…

恐怖は常に己れと在り「闇の奥」ジョゼフ・コンラッド(著)/黒原敏行(訳)/光文社古典新訳文庫

”フランシス・フォード・コッポラ”の名作「地獄の黙示録」の元になった小説だと、いつぞやの小島プロダクション(コナミの方針転換で消滅してしまった小島秀夫氏が率いる制作スタジオでありました)の番組で知り、いつか読もうと思っていたのをやっと読みま…

戦後30年、あの頃の子供は立派に煙たがられる中年になりました!「ぼくらの七日間戦争」宗田理(著)/角川書店

行儀よ〜く真面目なんて 出来やしなかった〜夜の校舎 窓ガラス壊してまわぁった〜逆らい続け〜あがき続けた〜早く自由になりたかったぁ〜♪・・・・・ 時は1985年。 まさにバブル真っ盛りなご時世。 仕事をやればやるほど儲かった時代である(今はやれば…

僕らもいつかは昔になるか....「ムカシ×ムカシ」森博嗣(著)講談社

相変わらず犯人が誰であるかなんて重要では無い森作品でした。 犯人も直ぐに分かってしまいます。 でも、それがまた良い。 資産家の夫婦が殺され、”SYアート&リサーチ”のいつものメンバー(小川と真鍋)と臨時アルバイトの女の子”永田”は、その家の美術品鑑…

足掛け27年の風が、ようやく止んだ....「タイタニア5<凄風篇>」田中芳樹(著)/講談社

またも季節の変わり目に風邪をひきました。 若い頃は何がなんでも仕事へ行ったので、僕が風邪で休むと「お前でも休むことがあるんだな」と良く言われていたものですが、今は少し熱が出ると素直に休みます。いくらエイプリルフールだからって、冗談で風邪ひい…

狂気を奏でるマイスター「稀人」小中千昭(著)/角川書店

飛浩隆さんのSF用語ラッシュと生々しい言葉選びが凄過ぎて少々胃がもたれてしまったから、次は軽い読み物にしようかと文字数が少なそうな本書を何気なしにチョイスしたのですが、これはこれで胃にもたれる物があって全然インターバルになりませんでしたw ※表…

ただただため息が出る美しい残酷さだ...「ラギッド・ガール 廃園の天使Ⅱ」飛 浩隆(著)/ハヤカワ文庫

昔から僕は宗教が嫌いだ。 ありがたい御言葉を守って楽になるくらいなら、カウンセラーにお金を払って無駄話でもした方がマシだと思うくらいに。なんというか、自分の意志を感じない信仰は不愉快なんですよね。言われる通りにしていれば良いんだという感覚で…

終わらない休暇ってのも、ある意味地獄だ「グラン・ヴァカンス 廃園の天使 Ⅰ」飛 浩隆(著)/早川書房

ネットを利用する時というのは、検索エンジンにキーワードを羅列してピンポイントの情報を引き出したい時が多いかと思う。 夜空に薄暗く浮かんでる褐色矮星に等しい僕のブログも、わざわざブックマークを保存して見に来てくれる方より、一度きりの出逢いを求…

友達ってなんだろ?「ぼくのともだち」エマニュエル・ボーヴ(著)/白水社/2013年(1924年)

『友達』ってなんだろ? 1度か2度しか会ったことが無くても、メルアドさえ交換してれば友達かな? しばらくしたら音信不通になりそうだけど。 学校や会社で一緒に笑顔で過ごしていても、プライベートではほとんど会わない相手はどうだろう? これを友達だ…

死に正しい名を付けれるのは理系作家だと思ふ。

本にしても映画にしても「もしも」自分がこの物語の登場人物だったらと、僕は自然と考えてしまう。無論僕だけではなく大勢が同じように考え、存在しない誰かのドラマに泣いたり笑ったり一喜一憂しているに違いない。 物語は、確実に誰かの糸<意図>で操られ…

死とは命の限りにあらず「The Indifference Engine」伊藤計劃(著)/早川書房

たった二年足らずのプロ作家活動でありながら、これほど惜しまれる小説家も近年稀なのではないでしょうか? 世に出た3冊の単行本だけでは到底満足出来ないと、彼の死後次々と雑誌掲載作品などを中心に書籍が発売。遺作となった「屍者の帝国」などは、盟友”円…

あいあむ下手の横好きじゃぱにーずっ!「THE FUTURE IS JAPANESE」早川書房/SF短編集

僕はSFが好き。そして読書が好きだ。 しかし、大した学も無く、学ぶ根気が保てない僕は並みの読解力の読者です。 作者の意図したメッセージを勘違いしたまま受け取りもするし、難しい表現や漢字を理解出来ないままにして読み進めることもしばしば。それでも…

打海迷宮に別れを告げた日「ドリーミング・オブ・ホーム&マザー」打海文三(著)

「信念のもとに<愛の可能性>について語らない」 「他者を徹底して批判すれば、自分自身を追いつめることになる。」 「善人は決して真実を語らない」 「札付きの平和愛好主義者」 打海さんの言葉は何処か教訓めいていて腑に落ちる。どう読み解くかは読者次第…

ぼくが愛したあなたの嘘「ぼくが愛したゴウスト」打海文三/中央公論新社/2005年

こことは少し違う場所 僕らはそんな案外直ぐ馴染んでしまいそうな異世界へ逃避し続けて来た。 耳が無いくせにネコ型だと言い張るロボットが机から出て来る世界。一頻り暴れまわったらさっさと寝ぐらに帰ってゆく巨大生物が崇拝されている世界。どこからとも…

不完全とは、可能性の宝庫である「一九七二年のレイニー・ラウ」打海文三/小学館/2004年/小説/感想

また一つ、打海さんの遺産を受け取った。 今回の「一九七二年のレイニー・ラウ」は、骨太な群像劇だった「ハルビン・カフェ」と打って変わって小難しいことは一切無しの、大人な恋愛が粒ぞろいの一冊。 『香港でわかれた女性レイニー・ラウに主人公が二十五…

狂熱の彼方で見る夢「ハルビン・カフェ」打海文三/角川書店/2002年/小説/感想

人生において「この作家の作品全て読みたい」とまで思えるのは貴重だと思う。数冊読んでいるうちに書き手の底が見えて来たり、手法に少し飽きてしまうことも多いからだ。 トコトン特定の作家の作品を読むと言うのは、少なからずを作家本人を読み解く行為であ…

当たり前の世界で座礁した心の行方「Rの家(改題:ロビンソンの家)」打海文三/マガジンハウス/2001年/感想

幼い頃に母親が自殺したことが原因なのか、周りと自分の感じ方の差に悩み自分の言葉はすべて「パクリ」だと明言している主人公が、高校を休学し"Rの家"という母親が存命なら家族みんなで住む予定になっていた家で過ごすことになるところから始まる本作を、休…

華を摘み取る女の本性とは...「そこに薔薇があった」打海文三/集英社/1999年/小説/感想

いつも打海さんの作品には、色っぽいシーンが付き物であります。言葉のひとつひとつから女性の生々しい裸体を想像させられてしまって毎度モヤモヤするんですよねw 今回のはその色っぽさが凝縮されてまして、これぞ打海文三と感じる背徳感丸出しの男女がまぐ…

まだまだマーニー間に合うよっ『新訳 思い出のマーニー』ジョーン・G・ロビンソン/越前敏弥・ないとうふみこ(訳)/2014年/角川書店/感想

劇場公開から約ひと月が経とうとしている「思い出のマーニー」 鑑賞した人達の評価は他の上映中作品と遜色無いのに、先に公開していた作品より早くランキングを下げているのがとても残念でなりません。決して思春期の子供達、特に女の子にだけ感動の波が押し…

あなたはどちらを先に見る(見た)?「特装版 思い出のマーニー」ジョーン・G・ロビンソン(著)/松野正子(訳)/1980・2014年/岩波書店/感想

杏奈という一人の少女が邂逅した金髪の少女マーニー。杏奈はマーニーと共に一夏を過ごし、周りと、そして自分と見つめ合い、子供らしい感情を取戻してゆく。 という、主に2人の少女が主人公の話であるのが「思い出のマーニー」なのだけど、当然原作は杏奈の…

終わった世界を生きる者達「創世の島」/バーナード・ベケット(著)/小野田和子(訳)/早川書房/2010年/感想

『時は21世紀末。世界大戦と疫病により人類は死滅した。世界の片隅の島に大富豪プラトンが建設した“共和国”だけを残して。彼は海上に高い障壁を作り、外の世界からこの国を物理的に隔離することで、疫病の脅威から逃れたのだ。同時に彼は、労働者、戦士、技…

ゴールが始まり。ここまで凄い道程だったなぁ...「天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク PART1」/小川一水/2014年/早川書房/感想

物語を書くにも、色んな手順が存在する。 ひとりのキャラクターから考える人もいれば、行き当たりばったりで筆に任せる人もいる。 なにかと引き合いに出す僕の大好きな永野護さんのファイブスター物語などは、唯一の縛りである架空の世界年表から書き、それ…

こんな迷惑な公務員に払う税金はねぇー!w「ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件」/七尾与史/幻冬舎文庫/2011年・2013年/小説/感想

「死亡フラグが立ちました!」のシリーズで、大いに楽しませてくれている七尾与史さんの同じく代表的作品であるドS刑事シリーズ。何もかも有り得いのが楽しかった死亡フラグ〜と違い、一応ミステリーとしてちゃんと筋が通った刑事物でした。 『静岡県浜松市…

酸いも甘いもの初物の醍醐味であ〜る「灰姫 鏡の国のスパイ」/打海文三/角川書店/1993年/小説/感想

どんなにミリオンセラーを重ねる有名作家でも、必ず避けては通れない通過儀礼があります。そう、処女作を世に送り出すと言う儀式です。 それに、その処女作が1番の傑作だと言われる作家は、実に稀なのであります... 僕が子供の頃から大好きな田中芳樹氏が”…

またかっ!だなんて言わないで♡「神様が殺してくれる」/森博嗣/幻冬舎/2013年/小説/感想

どんなに聡明そうに見える人物でも、どうしてもこれだけは止められないって事の一つや二つあるもので、僕の敬愛する森博嗣さんも救いようが無いほど執着していることがある。触れる事さえ赦されそうにない唯一無二の麗人や、確固たる自我が揺らいでばかりの…

身を心を切り裂く筆の音が聴こえて来そうだ『フォグ・ハイダ』/森博嗣/中央公論新社/2014年/感想

今の”森博嗣”の本気を見たかったら、このシリーズを読むしか無い!と、言いたくなるほど大好きな森博嗣チャンバラ活劇ヴォイド・シェイパシリーズ。 先月出た第四弾「フォグ・ハイダ」もすこぶる時代劇で最高でした。 少しだけ自分を取り巻く環境が見えて来…