無差別八方美人?

全然無差別じゃないおじさん、はてなブログに引越し中です。

小説

それでなくとも自由なのに、空まで飛べちゃう贅沢さ。僕も猫になりたい...「素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち」&「空を駆けるジェーン - 空飛び猫物語」アーシュラ・K・ル=グウィン(著)/講談社/感想

とある筋によると、猫は犬より世界的に人気のペットへとなりつつあるとのことですが、真偽のほど置いておくとして、確かに猫好きが日本でも増えたような気はします。僕の周囲で実際に猫を飼っている人は、犬のそれと比べるとまだ少ないですが。 猫好きが増え…

もう"新海誠って誰?"とは言われなくなった。でもその代償は?...「君の名は。」新海誠(著)/角川書店

kindleで小説を読んだのは久方振りだった。やっぱりなんだか味気ない。 漫画の電子版と異なり、小説の電子書籍化はKindle用に書式を整えるため変換されているように思うのだけど、実際紙媒体との違い(字間・行間とかフォントの味わい)はどれくらいの物なの…

”分かりたいより感じたい”それが僕の愛し方「自生の夢」飛浩隆/河出書房新社/感想

いやぁ参った。本当に参った。もしも僕が書き手だったら、飛浩隆さんと同じ土俵にだけは立ちたく無いと思った。 まるで張り合える気がしないから..... ・・・・・ 僕が幼稚園にも入っていない時代からSFを書いている方と、この歳になってようやく少しはSFを…

永遠は眩しい太陽、では無いと思う歳になった....「永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢」重松清(著)/感想

今では当たり前のように消費・歪曲されている異世界ファンタジーを、初めて”それと”意識したアニメは「ロードス島戦記」だった。剣と魔法を以って多種族が絡み合う世界観が実に重厚で、VHSのテープが擦り切れそうなくらい何度も観た。世界観構築に「指輪物語…

言葉を発明するお仕事は相変わらず面白そうだ「天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトとPART2」小川一水/早川書房/感想

比較的どの巻からでも楽しめそうな作りの天冥の標ではあるけれど、全てが収束し出した”VIII ジャイアント・アーク”以降は、それまでの内容が頭に無いと厳しいだろうなぁと、”ヒトであるヒトとないヒトと”のPART2を読み終えてぼんやり思った。今回もこれまで…

真っ先に不要だと言われそうな人類代表の僕です「デボラ、眠っているのか?」森博嗣/講談社

なんの為なのか、自らの意思で選択する暇も与えず、あれもこれもと無用な知識を押し付ける学校や親が大嫌いだった僕は、それ以外の場所から知識や人生を学んでいた気がする。小学生までは玩具や学研のひみつシリーズ。中学になるとゲームにアニメに漫画、そ…

自分=迷宮 それが人生かも「迷宮」中村文則/新潮社

胸を張って言うことでも無いけれど、僕は周囲から”面倒な人”だと思われている。実際自分でもそう思う。 誰かと親しくなるとあえて距離を取ろうとしたり、ビンゴが揃っていても商品を取りに行かなかったり、PS版よりSS版(セガサターン)を優先し、好きな子に…

飛べない大人が見上げた空に「空飛び猫」アーシュラ・K・ル=グウィン(著)/村上春樹(訳)/感想

僕は猫が好きだ。村上春樹も好きだ。アーシュラ・K・ル=グウィンはもっと好きだ。ならこの本は読まずに居られるはずもなかったのです。 産んだ子猫に何故か羽があって戸惑うジェーンお母さんと子猫たち 猫というだけで自由な気がするが、羽があれば更に自由…

生きる為に死に、死ぬ為に生きる「イデアの影」森博嗣/中央公論新社

コミック版「黒猫の三角」で出会ってから、森博嗣さんには様々な美しい光景を見せて貰った。 学者や泥棒、戦闘機乗りに侍、人妻から殺人犯に至るまで、森先生の手にかかれば歩くポエマー状態で、なすがままにしているだけなのに生き方がこうも美しくも儚くな…

うつのみこ日誌 九

読む度に”何故?”という気持ちが湧いてしまうという、読破への道が険しいものになって来た宇宙皇子。おかげでページを捲る手も遅々として進まず、道中寄り道をしながらようやく妖夢編を乗り越えたら、もう10月になっていた。全巻読破は来年以降に持ち越し…

心地良い風が溜息に掻き消された日「風は青海を渡るのか?」森博嗣/感想

ほんの二日前、障害者施設にて凄惨な事件が起きた。深夜に男が施設へ入り込み、何十人もの人々を殺傷したのだ。 犯人はその施設の元職員。日頃から不穏当な発言が目に付き、”マリファナは危険では無い” ”障害者が居なくなれば平和になる” といった趣旨の話を…

こんな源氏もあったもんだっ「ギケイキ 千年の流転」町田康(著)/河出書房新社/感想

源義経と愉快な仲間たちのことを、"町田康"さん流の嚙み砕き方で(嚙み砕くなんていう生易しい物ではない)紐解いた本書を読んだ後、ネットで源義経の生涯について眺めていた。普通ならば出世は望め無い九男ゆえの出世欲が目に付く生き様である。これじゃあ人…

Mの世界は広大だわ....「χの悲劇」森博嗣/講談社/感想

『人の格差を技術が作り出す。技術を手にした者は、社会人を容易にコントロールすることが可能になった。』 ・・・・・・ 前回の「キウイγは時計仕掛け」では、一旦核心(真賀田四季)から離れ、またGシリーズらしい同窓会色が強かったから、ちょと肩透かし…

どうせ死ぬなら無味無臭より毒であれ「書を捨てよ、町へ出よう」寺山修司/角川書店/感想

僕はノンフィクションよりフィクションで固められた物語性の強い本が好きだ。ゲームだってオンライン対戦ばかりより重厚なシナリオを味わえるストーリーモードが欲しい。そういう意味でいうと本書は0点だったかもしれない。 ”amazarashi”に首まで浸かるよう…

息継ぎも忘れて潜ってしまいたい....「深淵を歩くもの」小中千昭/徳間書店/感想

徳間が”デュアル文庫”を立ち上げたあの頃、2、3点気になる作品の一つだった本作。lainの小中千昭さんだと分かっていても、何故か買わずにスルーして「野望円舞曲」だけを手に取っていました。まだ”田中芳樹”氏の本ばかりの偏った読書をしていたせいかもし…

常人の幻想に住まう超人達「超人幻想 神化三十六年」會川昇/早川書房/感想

普段それほど脚本やシリーズ構成に興味は無いのだけど、二人だけどうしても意識してしまう人がいる。 一人は”小中千昭”さん。そしてもう一人が”會川昇”さんだ。 はっきりと意識するようになったのは、ありがちに『鋼の錬金術師』からではあるけれど、會川さ…

未来は常に輝きと不安に満ちている「さよなら、ロビンソン・クルーソー〈八世界〉全短編2」ジョン・ヴァーリイ/浅倉久志・大野万紀(訳)/創元SF文庫

八世界シリーズを収録した短編第二弾。"八世界"シリーズとは、地球外から飛来した侵略者により地球から追い出され、八つの星(月・水星・金星・火星・タイタン・オベロン・トリトン・冥王星)を人類が生活拠点とするようになったという未来の話で、所変われば…

呑気な人類の背を押す神の手「魔法の色を知っているか?」森博嗣(著)/講談社/感想

※ネタバレ感想文 出不精のくせに、「オデッセイ」のようなSF映画が上映されれば、自分に鞭を打ってでも観に行くくらいSFが大好きな僕ですが、科学は昔から苦手であります。大まかな概要は理解出来ても、何がどうしてそうなるのか?という詳細や、一つ一つの…

宇宙だろうが電子の海だろうが、生命あるところに物語は生まれ出づる「汝、コンピューターの夢」ジョン・ヴァーリイ(著)/大野万紀(訳)/東京創元社/感想

SFに限らず、自分が生まれた頃や、それ以前に初出したような小説を読む時は少し腰が引けてしまいます。文体や価値観の違いに振り回され、十二分に楽しめないことがあるからです。特にSFに関しては、10年、20年、30年と経つことにより、フィクションを…

僕の手に負えない面白さ「天冥の標IX PART1 ヒトであるヒトとないヒトと」小川一水(著)/早川書房/感想

この物量で年に1、2冊も出る天冥の標。他にも執筆しているのだから、けして小川一水さんの執筆は遅くは無い。 でも、僕個人の問題として読み直す暇を上手く作れず、ここに来て時折「この人前に出て来たっけ?」となる時がある。流石に週刊漫画でも無いのだ…

うつのみこ日誌 八

地上編に続き天上編をなんとか年内に読み直した。 この先何処まで期待して良いのか不安になる天上編の振り返りとなり、試練に次ぐ試練に耐え、北天の星を目指す皇子達の戦いと同じく、僕にとってもまさしく試練だった.... いくら思い出補正があったととは言…

うつのみこ日誌 七

本当に本当のようやくといった所で、地上編から合わせて16冊目を読み終えた宇宙皇子。本伝外伝合わせて全52冊読破への道は、主人公である皇子の抗いの旅以上に険しいかもしれない... もう何度も似た事を書いているけれど、かれこれ2、30年前に書かれ…

吊るされた先で生を得る者達「絞首台の黙示録」神林長平(著)/早川書房/感想

僕らは毎日生きている 何を根拠にそう感じるのか?それを不思議にこそ思えど、実際にこうして腹が減り、疲れや痛みを感じていれば、自然に自分は”生きている”と思えてくる。 しかし、なかなかに人間の意識というのは脆弱なもので、外的要因により簡単に揺ら…

♪ほとんど大人の〜thirty seven map「イカロスの誕生日」小川一水(著)/毎日新聞出版

新装版と知らずに手に取った本作でしたが、今の自分にとっては実にタイムリーな内容だったかもしれません。 ※最初はなんでまた表紙が”ゆうきまさみ”氏なんだろう?と思っていましたが、読み始めると完璧にゆうきまさみキャラで頭がいっぱいになりましたw 人…

手にした途端腐りだす美の正体「彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?」森博嗣(著)/講談社/感想

森博嗣さん初の文庫小説書き下ろしの新シリーズ。読み終えた今となっては、本シリーズの一端に触れただけに過ぎないのかもしれないと感じるものの、序曲としては非常に読み応えのある内容でした。 ”ウォーカロン。「単独歩行者」と呼ばれる、人工細胞で作ら…

我こそは次代を担うSF作家だ!そういう気迫が心地良い「伊藤計劃トリビュート」早川書房

ゲームに海外ドラマに浮気し放題で遅々として進んでいないものの、4編読み終えて思ったのが、やっぱSFは小説というカテゴリーの中で、一番可能性に満ちた存在なんだなということでした。 SFの多くが”近未来”を扱っているからそう感じるのではなく、たとえば…

うつのみこ日誌 六

とうとう10巻に手が届きました。 案外内容を忘れていて「そうだったか?」と、ちょくちょく思いつつここまで来ました。 ストーリーやキャラクターの性格について僕の中で出来上がっていたイメージが違っているのもそうなんですが、藤川桂介さんの文章のま…

うつのみこ日誌 伍

一気に読んでいるせいもあって、展開のパターン化に若干退屈して来た宇宙皇子。 子供の頃に読んだ時は文章が難しく思えたり深く感じた部分も、実は結構勢いに任せて同じことを繰り返し間延びさせて書かれていることに気づいてしまったりして、思い出補正とは…

うつのみこ日誌 四

宇宙皇子は人間であって人間ではない。天の子を宿した人から生まれたのだから所謂ハーフだ。 でも天の子だからと言っても、見た目は頭に角がある程度で、他の子供と変わらない彼は人並みに怒って泣いて笑う。 それでも誰よりも早く霊能力を身につけ、力を発…

うつのみこ日誌 参

自らの不遇な出生に端を発し、見知らぬ親への自己主張が社会機構全体への悪意へすり替わってしまった”魚養”(うおかい) 政治的な手腕と不釣り合いな優しさを内に秘めていたが為に、愛に溺れ、友情に傷付いた”大津皇子” 矜持を貫いた二人の最後は、やはり切…