無差別八方美人?

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言葉を発明するお仕事は相変わらず面白そうだ「天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトとPART2」小川一水/早川書房/感想

 比較的どの巻からでも楽しめそうな作りの天冥の標ではあるけれど、全てが収束し出した”VIII ジャイアント・アーク”以降は、それまでの内容が頭に無いと厳しいだろうなぁと、”ヒトであるヒトとないヒトと”のPART2を読み終えてぼんやり思った。今回もこれまで登場した人・物・場所が、これでもか!と押し寄せて来るから、予備知識無しに飛び込むのは宇宙服も着ないで宇宙に出るくらい無謀だろう。まあ「俺はアンチ・オックスだから大丈夫だ!」と、言う方なら止めはしない。
 情報量は確かに当初から多かった。なにせ新しい宇宙を構築しようと言うのだから、当然言葉やその意味も新しくて物量が多くなって然るべきだ。ただ小川さんの拘りは巻を追うごとに増してゆき、今ではすっかりガチなSF作品になってしまって、少々僕のような不勉強者は付いていけない面もある。人物・用語集が巻末に収められていても、そこから知りたい情報を引き出すことすら困難になっていたりもする。なんにせよ最終巻まで1年以上かかるとのことだし、それまでに1巻から読み直したくて仕方ない。
 未だ膨張を続ける宇宙と同じように留まることなく拡がっていく天冥の標。僕らが愛したヒトとヒトでない者達の行く末と、その先に広がる可能性を楽しみに2018年まで生きて行こうと思った。
 今朝ほど、質アニメや人間ドラマ系のアニメが云々という2chのまとめを読んだ。難解で説明が少なく筋道も”なんとなく”自分で補正して感じるしか無い作品を敬遠する傾向が昨今あるのでは無いか?というものだった。これは僕も常日頃感じている話で、キャラ見ばかりが優先で作られる作品が人気で、説明台詞が少ない思わせぶりな作品は好き嫌いが真っ二つなことが実に多い。前者は正直内容は空っぽな物が多く、登場人物以外の作り込みが甘くて心が一切動かない。後者は意味不明なのに何か感じる物があって、初めはピンと来ない登場人物でさえ終盤には凄く好きになっていることがある。どちらか過ぎてもバランスが良く無いし、できればキャラも魅力的だが、言葉で説明し過ぎず絵でもちゃんと語るようなアニメが望ましい。今季で言えば「ユーリ!!! on ICE」のバランス感覚は素晴らしいと思う。腐れファンが喜ぶキャラ付けだったり、フィギュアについて潔く説明を挟んだり、漫画ティストのギャグセンスであったり、凄くあざとい演出が多い半面、肝心な時の心象表現に言葉ではなく絵による演出を選ぶような上手さもある。
 小川一水さんのセンスにも同様の賛辞を僕は送りたい。小説なのだから絵でなく言葉ばかりではあるし、SF作品だから当然説明もそれなりになるものの、ここぞという時は本来の意味以上の言葉を折り重ねて雰囲気だけでも楽しめる作りになっているように思うからだ。
 小説家は世界の設定だけでなく、文章を設計するのが実に楽しそうな仕事である。実に羨ましい。
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