無差別八方美人?

全然無差別じゃないおじさん、はてなブログに引越し中です。

小説

キャラ読み&大学あるある「キウイγは時計仕掛け」/森博嗣/講談社/2013年/感想

前回の「ジグβは神ですか」 で、かなりあのお方に近づき弾けていた分、今回は番外篇色の強いマイペースさを感じ、祭りが終わってゆく時の寂しさというか、自分達で歩くことさえままならなかった子供が自分を当てにしないで巣立ってゆく時の嬉しさ半分悲しさ…

絶望を歩く希望「ザ・ロード」/コーマック・マッカーシー(著)/黒原敏行(訳)/早川書房/2008年/小説/感想

常に重苦しい雲が地上と空を二分し、足元には大量の灰。何処まで道を進んでも生きとし生けるものが死に絶えた地獄のような有様。何が起きたのかはよくわからない。ただ、圧倒的な何かが人類から文明的営みを奪ったことだけは確かなのだ。 そんな作物もまとも…

僕は君で、君は僕で「ディオニュソスの蛹」/小島てるみ/2014年/東京創元社/小説/感想

唯一の肉親である母を失って以来、ナポリの町で一人生きてきた少年アルカンジェロのもとに、ある日ブエノスアイレスから母に宛てた手紙が届いた。かつて母がブエノスアイレスにいたこと、自分に血を分けた兄がいることを知った彼は、彼の地に行く決意をする…

真犯人は、本の外に居るっ!?「仮題・中学殺人事件」/辻 真先/創元推理文庫/東京創元社/1972年/2004年/小説/感想

月に数冊程度の活字ファンである僕でさえ読む、もっともポピュラーなジャンル”ミステリー” 元より娯楽作品として産み出されたジャンルでありますから、幅広い層に人気があって当然なわけですが、案外大御所な作家のミステリーは頭の中で事件を整理するのが難…

好きだから赦せないってことあるよね....『王立宇宙軍 オネアミスの翼 小説版』/飯野文彦(著)/2010年(1987年初出)/朝日ノベルズ/感想

大好きなアニメ映画を3本上げろと言われたら、間違いなくそのうちの一本に上げるであろう「王立宇宙軍 オネアミスの翼」 地球によく似た惑星のとある王国に、軍服を着たまま街を歩いても何処で何をしてる軍隊か分かって貰えず、宇宙軍だと知ったら「宇宙人と…

最新刊の前に短編で肩ならしなう♪「小説現代 2011年9月号」/小島てるみ 他/2011年/講談社/小説/雑誌/感想

日夜様々な架空の世界を目の当たりにしている僕らオタクは、好きになった作り手に次から次へと新作を期待してしまう。 しかしながら、作り手がそんな我が侭に付き合う必要など実際には無いのだ。作りたい物を作りたいように作ることこそ本当の意味でクリエイ…

先が読めるから先が楽しみなシリーズ第三弾!「死亡フラグが立つ前に」/七尾与史/宝島社/2013年/小説/感想

難しいことはヒョイっと棚に上げてしまって、もはや様式美とも思える王道さをベッタベタにやってみせる"七尾与史"さん。 その堂々っぷりが非常に心地良いというか潔いというか、兎に角先の読める展開をいかに飽きさせず楽しませるかに溢れた文章の節々からは…

親の遺した夢の続きを子が紡ぐ難しさ「ラクソーとニムの家ねずみ(原題:Racso and the Rats of Nimh)」/ジェイン・レズリー・コンリー(Jane Leslie Conly)作/越智道雄(訳/1986年/児童文学/感想

とある研究機関により人間と同等か、それ以上の知性を身に付けてしまった家ねずみ達が活躍するお話「フリスビーおばさんとニムの家ねずみ」の続編をサクッと読んでみました。 前作で理想の生き方を追い求め慣れ親しんだ近代文明を捨てて、自分達で一から文化…

身体の大きさは、魂の大きさに比例しない「フリスビーおばさんとニムの家ねずみ」/ロバート・C・オブライエン”Robert C. O'Brien”(作者)/越智道雄(翻訳)/1971年/児童文学/感想

”児童書籍”と呼ばれるものは、大抵何かしらの『教訓』めいた事を伝えたがる。 「ウサギとカメ」では初めから結果が分かっていることでも、気を抜くと上手くいかないものだと説き。 「こぶとりじいさん」などは、欲をかき過ぎるとろくな事が無いから、無欲で…

半翼を捥がれた天使の哀しい物語「アルモニカ・ディアボリカ」皆川博子/早川書房/2013年/小説/感想

驚異の80代作家”皆川博子”さんの力作「聞かせていただき光栄です」の続編にあたる本作。今回も18世紀のイギリスにタイムスリップしたかのような感覚を文字で届けて下さいました。当時のイギリスを感じさせるディティールを丁寧に織り込み、実に巧みに美…

とりあえずの安住と、ほころび。そして....「天冥の標 Ⅶ 新世界ハーブC」/小川一水/早川書房/2013年/小説/SF/感想

読み終わるたびに思うけれど、これほど広いファン層に愛されそうなSF昨今において稀かもしれない。 骨太なSFが好きな人 ライトなキャラ萌えが好きな人 まったくSFを読まない人 それぞれがハマれる要素がギッシリ詰まっていると僕は思う。 もしも平和に暮らし…

狂気が狂喜を産み、凶器を産み落とす「愛と悔恨のカーニバル」打海文三/徳間書店/2003年/小説/感想

本書を読み終えて最初に思ったのは、これ以上の愛情表現は無いだろうということ。様々な愛の形をハードボイルドと言うオブラートに包み、僕らに届けてくれた打海文三さんだが、彼自身はどんな愛を渇望していたのだろうか?..... インモラルで片付けて良い気…

ろくでなしを葬る子守唄「苦い娘(旧題「ピリオド」)」/打海文三/中央公論新社/2005年(1997年)/小説/感想

今回の”打海文三”作品も、いつもの”アーバン・リサーチ”シリーズなんですが、珍しくウネ子さんが出て来ませんでしたw 自分が努めている潰れ掛けの印刷所に押し掛けて来て、他の債権者に資産を押さえられる前に書類と社長家族を連れ去ったろくでなしの叔父”萩…

”小白の栴檀草”の花言葉を君に贈ろう「兇眼」/打海文三/1996年/徳間書店/小説/感想

もう色々と本が山積みだったり、買いたい本がまだまだあるけれど、しばらくは”打海文三”さんにどっぷり浸かろうと今回も”アーバン・リサーチ”シリーズを読みました。 そのむかし大学助教授だった主人公”武井”には、触れてもらいたく無い過去があるのだが、そ…

茨の道を抜けた先には「されど修羅ゆく君は」/打海文三/徳間書店/1996年/小説/感想

ハードボイルドな探偵物、アーバンリサーチシリーズ第2弾。 終わってみれば、殺人の疑いをかけられた探偵崩れの色男の為に、少し大人びた登校拒否の13才少女と、熟し切っても女のプライドは錆び付かない60歳越え婆ぁが張合って事件解決の為に行動すると…

アナタの生きた証になりました「ハーモニー」/伊藤計劃/2008年/早川書房/小説/感想

昔から「人類の歴史」は「戦争の歴史」であると言われるほどに、人間は何度も戦争を起こしては静めて来ました。 まるで何かを調節するかのように、自主的に始め、自主的に終わらせるのです。 何処かの誰かも言っていました。 戦争を始める時は「命より大事な…

待望?大望?耐乏?...「タイタニア 第4巻<烈風篇>」/田中芳樹/講談社/2013年/小説/感想

ついつい積んでいた森博嗣さんの新刊を読み始めてしまったために10月にズレ込んでしまいましたが、タイタニアの4巻を読み終わりました。 3巻でタイタニア同士が相撃つ展開になってこれからと言うところで終わったわけですが、戦争らしくなるのは4巻を6…

またやってくれました森・ザ・ワールド!「赤目姫の潮解 LADY SCARLET EYES AND HER DELIQUESCENCE」/森博嗣/講談社/2013年/小説/感想

正直、また凄いパスを投げかけて来たものだと戸惑いました。 ”赤目姫”と言う比類無き存在と、それを取り巻く人々の特殊さを一般人代表的な2人が観測し続ける話になるかと思いきや、あっという間に、その観測者だった2人が今度は違う人物に変わって、場所に…

新刊発売前に間に合った!「タイタニア」/田中芳樹/徳間書店/1988年/小説/感想

十数年振りに再読したけれど、皆さんはタイタニアを知っているだろうか? 「銀河英雄伝説」で味を占めた徳間書店が二匹目のドジョウを狙って”田中芳樹”氏にどうしてもとお願いした結果作られたスペースオペラで、傀儡としての王を掲げ、自らは臣下として身を…

痴情のもつれは”オフィスCAT”にお任せ☆「別れの夜には猫がいる-泥棒猫ヒナコの事件簿-」/永嶋恵美/2011年/小説/感想

男性関連でお悩みな女性の救世主「オフィスCAT」は、ちょっぴり値段はお高い(10万円〜)が確実に目標(男)の気持ちを奪い取るというサービスを提供している。 別れたい。別れさせたい。 どす黒くも至極素直な願望や、切実な危機感から10万円を払ってで…

陽子の旅の始まりから最新短編集までを読んで『十二国記』に想うこと

待望のシリーズがとうとう再起動すると言うことで、その前哨戦と言える書き下ろしを含めた4編からなる短編集「丕緒の鳥」を発売日から間をおかず直ぐ様購入したのですが、せっかくなら最初から読み直そうと考え読み終えるまで新作は封印しておりました。 し…

荒ぶる小川神よっ!静まりたまえ〜!!『天冥の標 宿怨 PART3』/小川一水/早川書房/ハヤカワ文庫JA/ 2012年/感想

すっかりパート3が発売しているのをスルーしていた事に気付き、焦って買って読みました。 一気に全てが収束しだした『宿怨』を締めくくる無力感があまりにもSFで最高でしたね。 全ての元凶である”被展開体”の代理戦争でしかない戦いに身を投じる人々の懸命…

このコラボに10年掛かりで気付いた僕って...「レインボウ・プラネット〜灼熱の竜騎兵シェアードワールズ〜」小川一水/田中芳樹(原案)/2002年/小説/感想

この前小説を整理してしていたら、お決まりの積み読本の中に”小川一水”さんの名前を見つけ、こりゃ読まなきゃならんなー!と鼻息を荒くして読み始めたのですが、流石10年以上前の作品となると、まだまだ荒くてまとまりに欠けている感じで、可愛げが無いく…

素晴らしくベタな日本の様式美がここに「スカル・ブレーカ/森博嗣」/中央公論新社/2013年/小説/感想

うん。やはり「ヴォイド・シェイパ」シリーズは良いですね。 具体的に何が良いと語るのも野暮なほど、森さんのティストにぴったりな題材だと思います。 出生にいわくがある主人公”ゼン”が、育ての親であり剣の師である男の死を機会に山を下り、世間を学びな…

絶望に囲まれた楽園にて「死の影の谷間/ロバート・C・オブライエン」/評論社/2010年/海外/小説/感想

子供の頃、学研の『ひみつシリーズ』と言う色んな分野の知識や雑学を子供に分り易く漫画でまとめた本が好きで、それこそ背表紙から破れて来るほど何度も読んでいたのですが、そのシリーズの中でノストラダムスの大予言について書かれたものを眼にしてから何…

多いに悩み、大いに生きよう「人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか」/森博嗣/新潮社/2013年

僕ら人間は、日々小さい事から大きな事まで悩んでいるつもりになっている。 勉強や仕事で悩み。家族や友達との人間関係に悩み。果てには娯楽のはずのゲームやテレビで悩みだす。 けれど、悩むときどんなベクトルで、どんな視点で物事を考えているだろう?自…

なかなか報われない男の旅が終わった...「エージェント6」/トム・ロブ・スミス/田口俊樹(訳)/新潮社/2011年/小説/感想

巨大な社会主義国であった”ソ連”と共に生きた”レオ・デミドフ”の三部作に渡った苦悩と悔恨の物語が終わった。 1作目の「チャイルド44」では、国家を愛する公僕としてどんな事もやって来たKGB捜査官のレオが、初めて国家の規範から外れ自らの意思に従い連続…

全裸刑事テイクオフ!!『5分で読める! ひと駅ストーリー 降車編』/七尾与史 他/宝島社/2012年/小説/感想

今年に入って読み始めた『死亡フラグ』シリーズのあまりの馬鹿馬鹿しさに惚れ込んでしまい、作者である”七尾与史”さんのファンにすっかりなってしまった僕。 すると同じく七尾さんの阿呆さ加減にハマっていた友人に、とんでも無い短編を七尾さんが書いている…

このバイタリティは何処から湧いて来るのだろう....ゴクリ『聞かせていただき光栄です』/皆川博子/2011年/早川書房/小説/感想

少し前にプロスポーツ選手の誰もが避けられないのが「引退」だと書きましたが、同じく『プロ』の世界の作家である”皆川博子”さんには必ずしも当てはまらないのかもしれません。 御歳80歳を越えると言うのに、若手に負けない物量の新作を発表出来る事は、驚…

脱力系Bミステリー第2弾!「死亡フラグが立ちました! カレーde人類滅亡?!殺人事件」/七尾与史/宝島社/2012年/小説/感想

【死亡フラグ】 映画や漫画、ドラマなどで近い将来に登場キャラクターに死亡を予感させる伏線のこと。キャラクターがそれらの言動をとることを「死亡フラグが立つ」という。 ※作中冒頭より 狙った獲物は絶対に仕留める殺し屋”死神”の魔の手から辛くも逃れたB…