週に30本を優に超える数が放送されるアニメを、”消化”と称して観るようになってしまった僕にも、1本1本を大事に見ていた時期があって、特に中高生の時がピークだったと思う。
兎に角何を観ても楽しい頃だった。セーラームーンに幽遊白書、Vガンダム、ヤダモン、ママは小学4年生、テッカマンブレードや”くれよんしんちゃん”まで余すところなく愉しんだ。
今月の17日に亡くなっていたことが公表された辻谷耕史さんが主演していた「無責任艦長タイラー」も大好きな作品で、一見無責任に見える男が意図的なのか偶然なのか分からない感じで、本質を露わにしていくのがただただ面白かった。
真下耕一さんの演出力や、原作の良さもさることながら、辻谷さんの無害で無欲で誠実そうな声がタイラーという男の懐の深さを表現出来ていたのが大きかったように思う。無声アニメは無声アニメで良さはあるが、動き回るキャラクターに声を入れると、達磨の眼に墨を入れるのと同じで魂が宿るように感じる。そういう意味でいうと、声優というのは素人が思う以上に責任重大な職業だと言えるだろう。
数日前には田中信夫さん、更に少し遡ると石塚運昇さんも亡くなった。寄る年波には勝てないわけだが、辻谷さんのように50代でも亡くなる方も多いから声優界隈は見てて辛い。
演技のお仕事というか、アニメ業界そのものが大変な業界かもしれないけれど、声を吹き込んだその瞬間から自分だけの命ではなくなっているのだという自覚は持って欲しいし、純粋に好きな声の持ち主には、少しでも長く幸せに過ごして欲しいと願わずにいられない。
まあ、長く生きること自体が不幸な人も大勢いるわけだが......
バーニィ、シーブック、タイラー艦長.....安らかにお眠り下さい......