僕は「大ヒット」という言葉に踊らされるのが嫌いだ。
多くの場合、肝心のコンテンツが煽り文句以上では無く以下な出来栄えであるし、売れている=良い物と言う発想事態が気に入らない。
”2ちゃんねる”のようなマニアックな掲示板から、TwitterのようなSNSが全盛の時代に入り、様々な人と情報を共有し易くなり、何が『今』人気なのかも意識せずとも目に飛び込んで来るようになってから、尚更懐疑心が強くなりました。無論まったく試しもしないで良し悪しを判断するのは愚か者のすることだから、周囲の熱が冷めた頃合いを見計らって、こっそり試していたりする。
試した結果は大概経験則から導き出した想定の範囲に収まって”やっぱりそうか”で終わるものの、時として自分の目測を飛び越えた武器を携えたモンスターもいる。ベイマックスはまさにそれだった。
ガンダムは「白い悪魔」と呼称され、恐怖の対象とされていたりしたけれど、ベイマックスは「白い天使」と呼ぶべき存在でした。表情に乏しい顔。メタボ真っしぐらな体型。融通の利かないAI。はっきり言ってポンコツな気がしてならないのだが、兄の死で心を閉ざしてしまった少年にとっては、同情した表情で妙に気を回して来る保護者や知人より接し易かったに違いない。相手がどんな心無い言葉を吐き出していても、身体の調子から精神状態を理解し、勝手にケアしようとするベイマックスの愚直な行動一つ一つが少年の心を解きほぐしてゆくのが本当に良い。
感動的なドラマを支える上で、アメリカの風景とロボット好きな日本の風景が合わさった美術の作り込みや、主人公の少年と悪者を退治することになるキャラクター達の造形のリアルさは重要な要素。相変わらずディズニーの技術力の高さを感じました。ちょっと動かし方にマンネリを感じないでも無いですが、バジェットや人材の問題でまず日本では成立しない映像の数々には嫉妬を隠せません。
あまりディズニーの人間のモデリングはデザイン的に怖いから苦手ですが、ベイマックスのような造形センスは凄く好き。「WALL-E」に次いで好きなディズニーアニメになりそうな気がします。
※それでなくとも強烈な登場人物の中で、一番の破壊力だったハニー・レモン。でも実はお気に入りのキャラであるw
※なんちゃって日本文化が入っているのも、日本のロボットへの関心の高さなのか?それともジブリ大好きなジョン・ラセターが日本贔屓だからか?
かなり周りの評判では「泣ける映画」という印象でしたが、僕にとっては優しく笑える映画でした。何処まで理解して行動しているのか分からないベイマックスの感じに程よく癒されました。
大抵のことは叶えてくれるネコ型ロボットより、肝心な時ただひたすら寄り添ってくれる白い天使の方が側に置いておきたい存在かもしれません。
ベイマックス、もう大丈夫だよ