僕は小柄で可愛らしい人も好きだが、むっちむちの豊満な身体をした女性も大好きだ。
でも、そんな好物も、一緒に乾物やら油物があってこそ美味しく思える一品なのだと、中年になってから思う場面が増えた。要するに、美女には美男だけじゃなく、おっさんやお爺ちゃんを絡めて頂いた方が絶対バランスが良いと言いたいのである。
そして、そんな願望を最近ちょくちょく叶えてくれるお人こそ大石まさるさんなのだ。
賞金稼ぎにして、アパート”マーチャンダイス”の大家さんでもある女性の元に集まって来る、一癖も二癖もある住民達のまともじゃない火星の日常を描いた本作、もう兎にも角にもキャラクターのバリエーションが豊かで、ちょっとキナ臭い話になっても、それを笑顔で押し退けるエネルギッシュさもあり、火星という生存困難な環境下で逞しく生きる人間が本当に愛おしく思えるのが素晴らしい。訳ありの童顔地球人美女、外道なのに愛嬌がある賞金首、へらへらと無害そうな顔をしつつ目からビームを放つ叔父様、社会的立場を放棄してまで釣りに現を抜かすお爺ちゃん、絵に描いたような美少女ロボと喋る猫、美女をスルーして車に夢中のお坊ちゃん、お世話好きで少々痛めだがナイスバディの大家さんなどなど、誰も彼も生き生きしていて気持ち良い。
火星が舞台であることを、小難しい言葉抜きでそれとなく実感させてくれる設定群や背景の緻密な描き込みも相まって、彼ら彼女らの魅力が更に引き出されているようにも感じた。それと、やはり大石さんの漫画は女性が逞しくお茶目なのが清々しくて大好きだ。
1巻と言うことで、もう暫くはこの連中とわいわいやれそうなのは嬉しい限り。「ライプニッツ」「キラリティ」そして本作と続く喋る猫の旅は何処まで続くのだろう?いっそライフワークにしていただいて、それをにやにやしながら何十年でも読んでいたいなと思った。
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