休日の朝から年甲斐も無く、漫画でうるっと来てしまった。
しかも還暦を迎える借金まみれのおっさんの自伝めいた作品で泣いているのだから救い難い.....
”のむらしんぼ”と言えば、言わずと知れた「つるピカハゲ丸」の作者であり、それ以外は全然知られていない作者でもある。他にもそれなりにヒットした作品があるそうだが、なにせ子供向け雑誌であるから短いスパンでしか読まないのが普通であり、僕も当然のように小学校を卒業する頃にはコロコロの漫画にほとんど触れなくなって、丁度読んでいた時期に連載していたつるピカハゲ丸くんしか知らない。
そもそも今から2ヶ月ほど前に放送された「ニノさん」で「LIAR GAME」のヒット以降漫画家として絶頂を迎えている”甲斐谷忍”先生の当て馬として”のむらしんぼ”さんが出演しているのを見るまで、完全に僕の中で忘れ去られた存在だったから、まさかまだ漫画を描いているなんて勿論思いも寄らなかった。あれだけのヒットを出しても、その後が続かず60にして借金が1500万もあるという今の”しんぼ”先生の見窄らしい生活を見せられ、思わず援助がてら本書を買ってしまう自分がいた。
※見ればオーラの違いで分かるかもしれないが、右が”のむらしんぼ”先生
※しんぼ先生らしい四コマを披露
それからしばし新刊のビニールを破ることもせず積んでいたわけだが、こうして気紛れを発揮して読んでみると実に面白かった。コロコロ創刊時から長年関わって来た生き字引というべき人の本音混じりな一言一言が実に良い。嫁に見放され、借金に塗れ、唯一残された漫画にさえ希望を持てなくなっていた所に、自分だから描ける物を見つけた男の筆は実に力強く、コロコロコミックと自分の、これまでの歩みを持ち前の明るさで重くし過ぎずまとめられている点にもベテランの味を感じた。
繊細な線や美麗な絵が売りの漫画家では無いのも関係あるかもしれないが、いまだに絵が変わらないのも、なんだか懐かしさで胸がいっぱいになる。絵もドラマの作りも古くて安心するのだ。これって全然褒め言葉では無いかもしれないが、どんどん絵を変えることで生き残っていけるとは言い切れないのが漫画の世界であるし、一目見るだけで記憶が蘇る指標のような存在でい続けるのも悪いことでは無い。それどころか老い先長いとは言い難い年齢で、これだけ借金しながら生きている”しんぼ”先生を見ていたら、妙に勇気が湧いて来るというものだろう。
※のちに藤子・F・不二雄と名乗ることになる先生に言われた一言で今の今まで漫画を描き続けているのかもしれない
編集、師匠、漫画家仲間、そして読者、色んな人に励まされ、支えられ、自分一人では作り出せない物を世に出す漫画家達。僕らの知らないところで毎日のようにドラマが生まれ、それが作品に反映されることも多々あるに違い無い。
漫画家達の全てを汲み取ることなど出来はしないから、せめて作品を存分に楽しんであげたいものだと思った。
小学館公式ページ コロコロ創刊伝説 1 | 小学館
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