無差別八方美人?

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身を焼くような炎?それとも焚き火の暖かさか?「野火 (1959年版)」市川崑

 改めて戦争はやらない方がマシだなと、心身の底まで思い知らせてくれた”塚本晋也”監督の「野火」。
 この際良い機会だから、いち早く”大岡昇平”さんの原作を映像化していた”市川崑”監督版も観てみました。
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塚本監督の田村一等兵もかなり個性的でしたが、”船越英二”さんの田村一等兵も凄く変わり種でした
 お話の大まかな筋は当然どちらも同じ。でも市川崑版の方が隠し切れない人情に溢れています。
 冒頭、主人公である田村一等兵が上官に叱責され部隊を追い出されるシーンでは、ちゃんと優しくフォローしてくれる人達がいるし、異様な威圧感よりどちらかというと仲間意識を持った”人”が其処彼処にいるから気分的に楽に観ることが出来ました。
 見せ場が少々淡白に描かれていることと、塚本晋也監督のユーモアのような要素がほとんど無いのは物足りなかったですが、自然の広大さしっかり伝わって来ましたし、随所でおっと思わされるシーンがあって、今尚色褪せ無い価値があるフィルムだと感じました。
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久しぶりの塩を口に含んで涙する兵士
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力無く歩く姿は、まるで生ける屍であります....
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田村が自分のふんどしで白旗を作るシーン大好き
 子供の頃に一度観たような気がするものの、ほとんど記憶に残っていなかったので、初見のようなものだったのですが、この映画が作られたのが50年以上前であることを考えると、市川崑監督は本当に今の映画界の礎として貴重な存在だったんだと考えさせられます。もしも市川崑監督の野火を当時の映画館で封切られた時に観ていたら、どんなに興奮して家路に着いたことでしょう。
 塚本版市川版、どちらもそうなんですが、田村が合流した部隊が全滅してからの、絶望感漂う田村の放浪のシーンが強烈に残るんですよね....
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「俺が死んだら、ここ食べて良いよ」
 自決を強要しておきながら「元気で行け!」と送り出す上官。足が悪いから子分に働かせるおっさん。食料欲しさに現地人を殺してしまう主人公。あらゆる理不尽が横行し、何処にも誰にも正義や悪は無く、ただただ生きる本能だけが暴走する哀しい物語。
 目的も何もあったものじゃない戦場で、田村が自分以上に限界を迎えている兵士達と遭遇し、明日は我が身かと絶望してゆく野火を観れば、絶対安倍政権にNoと言いたくなることでしょうな....
 どうでも良い話ですけど、”永松”役の”中村達也”(新)と”ミッキー・カーチス”(旧)さんが似てるなって思いました。見た目も演技もw
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