完結するとは夢にも思っていなかった「新世紀エヴァンゲリオン」貞本義行
連載当時、これはまさかのコミカライズでありました。
読み切り等で描いたことがあると言っても漫画が本業では無い”貞本義行”さんが、自身がキャラデザを手掛けたエヴァを月間ペースで連載するというのは、サダモトインパクトとでも言うべき驚天動地な珍事でした。
それまでもアニメーターやイラストレーターが漫画化を手掛けることはあったけれど、所詮読み切りか単行本1冊分でおしまいと言うことが多く(庵野秀明さんが一生涯の師と仰いでいる宮﨑駿さんの「風の谷のナウシカ」という例があるが、あれは漫画が原作なのでコミカライズとは言えない)、コミカライズに関してはだいたい無名であったり器用貧乏な漫画家さんが元絵を真似して描いているのが当たり前でしたから、アニメの印象を大きく崩される心配の無い本家が漫画版を描く、これほどファンが嬉しいことはありませんでした。
そうして始まった貞エヴァは、アニメ版と少し違う答えを出して完結。多忙な中、休載を挟みつつ無事終わってくれて本当に良かった。アニメ版で抽象的過ぎた部分が、かなり分かり易い構図で説明されており(碇夫婦の想いや、シンジくんの幼少期の描写も多い。その分脇役の出番は減っている) やはりどんな小難しい用語も奇抜な絵も単に装飾に過ぎず、人間が「個」として存在する意味について伝えたかったのがエヴァの真髄だと改めて思いました。多くの理不尽と謎の描写から、無駄に深読みした考察をまで行う人が後を絶たなかったわけですが、ぶっちゃけ心を閉ざして引き篭もった少年がいかに表舞台に戻って来たのかを愛憎劇で脚色しただけのことなので、謎解きなど無意味なのでは無いでしょうか?
話は変わりますが、僕は漫画版のシンジくん好きです。
抱えた心の闇は同じくらいかもしれないけれど、鬱々としているだけじゃなくて、そこから脱したい勇猛な気持ちがアニメ版より伝わって来るからです。マーティ・マクフライのように”チキン”と言われるとカチンと来るくらいの気持ちがねw トウジの一件があった時も、自分の拳で殴りかかろうとするシンジ君が見られ、その際の驚きを隠せない碇ゲンドウの表情は見もの。シンジくんの人間味が増しているのと同時に、ゲンドウの弱さも見えて来るのが実に面白かった。カヲルくんとの関係も実に男の子らしい反応で描かれていて、完全にほの字だったアニメ版より自然だったかもしれない。
勿論アニメ版の方がまとまりが良いように感じる場面や、ストーリーの改変で感動が薄らいでいる部分も多々あったものの、貞本義行と言う優しさで補完されたおかげで、新たな側面からエヴァを楽しめたことは大きかったです。もしかしたら蛇足だと言われるかもしれないことを覚悟で、自分なりの終焉を紡いだ貞本さんおつかれ様でした。気難しい人の趣味と感情が爆発して作られた作品を、よくぞ咀嚼してまとめてくれたものです。
ほんと趣味の世界でしたよねエヴァンゲリオン。ウルトラマンにナウシカにイデオンに、あと何が混ざっているか分からないごちゃ混ぜミックスですから。庵野秀明の生々しい魂が込められたおかげで歴史に残る名作になりはしましたが、誰が真似をしてもこんな絶妙なバランスの作品はなかなか作れないことでしょう。
考察など無意味とは言ったけれど、「エヴァとはなんなのか?」と問わずにいられない気持ちも分かります。庵野秀明さんが作り直している新劇版ヱヴァもトンデモ展開ですから、まだしばらくは同じつぶやきをファンは繰り返すことになるでしょうな....
掴めそうで掴めない。エヴァのこの性悪な感じ大好きです♡ (= ワ =*)