ほとんどの作品に人と自然との共生について盛込み続けているスタジオジブリでは、森のオバケだの、人間に変身するお調子者のタヌキだの、果ては大津波を連れて来る魚の女の子まで大活躍しちゃうわけですが、そんな方向性を運命付けた作品が「風の谷のナウシカ」だったように思います。
今までに何度も何度もTV放映がなされて来たので、流石にもう率先して観たくなる作品では無かったのですが、ここのところ集中して聴いていた鈴木さんのラジオに触発されてブルーレイ版の出来が気になりウッカリ観てしまいました。
色んな処理を施すことでガラッと印象を変えられる今の時代に、あえて映像を綺麗にし過ぎず、当時の劇場で鑑賞したらこう言う色合いだっただろうと思えるテイストを再現したそうですが、素人目にはあまりよく分らなかったかもしれません。ただ、どことなくクリアになっている事は確かで、VHSやDVDの圧縮によるノイズが存在しないため当時の作画の状態が良くも悪くも丸わかりになっており、こんなに手作り感のある映画だったのだと変に感心してしまいましたw
お家芸のひとつである美術
黄金色をしたナウシカの回想シーン。童話的恐怖表現がなんともいえず良い....
最初から最後まで漂う文明の寂れた感じがやっぱり良い映画ですね。冒頭ユパ様が「また村がひとつ死んだ」と口にして重苦しいタイトルコールに突入する時点でズーンと来るし、トルメキアの飛行機の近未来風でありながら無骨な作りの不気味さや、極めつけの巨神兵の気持ち悪さまで、かつて栄華を極めた世界の残り香がこれほど虚しく感じられるアニメ映画は当時も今も「風の谷のナウシカ」を措いて他に無いかもしれない。
ドロドロ腐り落ちるところがほんと嫌.......
ナウシカにおいて自然を代表する存在である王蟲(オーム)の恐ろしいまでの荘厳さも、何度目であろうが圧巻でしたね。宝石のように綺麗な王蟲の抜け殻。身体を伸縮させてゆったりと動く様。我を失い赤い目で暴走する姿。人類を見定めているかのように鎮座する神秘性。本当に凄く存在感あります。ちょっと気色悪いけど触角みたいなもので癒してくれたりもしますしね。ホントは良い奴等なんだろうなぁ....
子供の頃、正直怖かったですよナウシカは。巨神兵も、王蟲も、そして殺戮兵器を巡り争う人類の生き残りも恐ろしかった。
でもこうして観直してみると、真に恐ろしいのはナウシカ本人な気もする。
自分の指をあえて噛ませて「大丈夫」とキツネリスを諭す姿もそうなんですけど、敵・味方、人間・動物問わずに気遣うあの母性の大きさが恐ろしくて仕方ありません。
どうしてそこまで君は出来るのか?....
ナウシカの父ジルが殺された時だけは流石に人間らしい怒りを見せたけれど、その他は不気味な蟲だろうと忌むべき親の仇だろうと気に掛ける。こんな人間が本当に居たら、どっぷり宗教に浸かっているか、脳の仕組みがちょっと他人とは違っているかのどちらかだと思います。
最後にはあんな穏やかな顔して王蟲の突進をその身に受けるわけだし、まともな神経じゃ絶対無理ですよ...
そんな強靭な精神をしたナウシカが主人公で、かなり真面目な作品内容だから、僕的に不真面目を絵に描いた男クロトアの存在が大きい映画でもありましたね。
野心はデカイが小市民気質にドップリなナイスガイ♡
宮崎作品にはだいたいこういう小悪党が出て来ますよね。周りが見えなくなるくらい真っ直ぐな主人公が好きな宮崎さんですが、客観的な物の見方が出来るちゃらんぽらんな人間の必要性もちゃんと知ってる人だから恐ろしい監督であります。ガス抜きに丁度良い人物なんですよクロトアw
そういや本当の意味でのナイスガイであるユパ様の見せ場も良かったなぁ。
ユパ様帽子脱ぐと可愛い髪型してるw
見事に往年の時代劇なんすよw
風の谷の大好きなところを挙げ出したらキリが無いのでもう止めます。
とにかく、ブルーレイで再度見た結果言えることは、今のジブリには作れない味がナウシカの時代にはあったと言うこと。
手描きによるチャレンジングな緊張感溢れる作画の数々であったり、壮大なオーケストレーションと共に時の人となった久石譲さんの初々しくも重厚な音楽であったり、実写畑の有名役者ではなく叩き上げの演技派声優がキャストに名を連ねている事も自然に世界観へと誘ってくれました。けして今のジブリの在り方が嫌いなわけでは無いけれど、あの頃だからという事実が確かにあるのです。
これだけ凄い映画だと、昔のジブリ作品しか愛せない人がいるのも仕方無いことかもしれませんなぁ.....
なんだか、今度こそ風の谷のナウシカの漫画版を読み切れそうな気がして来た。
手元にあるし是非読もう。是が非でも読もう。
さて、漫画でもメーヴェは心地よく飛んでいるかな? (= ワ =*)