無差別八方美人?

全然無差別じゃないおじさん、はてなブログに引越し中です。

2人のゴッホの物語「さよならソルシエ 1巻/穂積」フラワーコミックスα/小学館/2013年/漫画/感想

 デビュー作である「式の前日」が様々なところで好評を博した”穂積”さんの新刊であり、初めての長編と言う事で、うっかりジャケ買いしてしまったわけですが、まさかのゴッホ兄弟のお話とは思いませんでした(帯や裏表紙のあらすじに眼を通して無い残念な人...)      ゴッホと聞くと、不安定な歪んだ線を幾重にも引いて素朴だけど温かさのある絵を描く”黄色”の人といった印象がありましたが、彼の人間性までは深く知りませんでしたし興味も無かったのですが、今作の主人公であるゴッホの弟とゴッホ自身があまりにも美化されているので便利なGoogleさんでざっと調べてみました。  ゴッホについて書かれた本や番組を見た方のブログ等によれば、ゴッホ(兄)は相当イカレたお人だったようで、一番の理解者であり一生懸命に兄の絵を世の中に広めようとしているテオ(ゴッホ弟)に相当酷い言葉を手紙で送っていたそうだ(逆にベタベタな愛を綴ってもいる) 実の兄であり素晴らしい才能の持ち主だと心から認めていなければ、速攻で見放したくなるほどのツンデレた”かまってちゃん”だったようです。  自分の世話を焼いてくれた弟に恋人が出来てからは更に疑心暗鬼に落ち入って相当酷い状況で、もう兄弟と言うよりタチの悪い元カノ的な感じで、最後にあんな死に方を選んだことも残された者のことをまったく考えていない所行としか思えません....  ゴッホの死後、テオは心労が祟って弟も数ヶ月後に亡くなっていますし、後世に名を残すほどの人はやっぱり人格者たりえないものだなとつくづく思いました。ハッキリ言ってゴッホ自身より弟のテオとテオの家族の方をこそ、”ゴッホ”を長きに渡り語り継いだ偉人として誉め称えるべきでしょう。ゴッホがいなくともきっと違う才能がその穴を埋めただけの事と思いますし、彼の他にも日の目を見れなかった画家達は沢山いたわけで、たまたま家族に恵まれただけの男がゴッホであったのかもしれません。    で、前置きが長くなりましたが、こんなドロドロした関係だったゴッホの危うい兄弟愛がすっかり穂積さんの仕業でBL風味になってはいるものの、切れ者なブラコン野郎のテオが、絵だけが取り得の兄貴の為に、裕福層向けの絵しか芸術として認めていなかった当時の絵画界を内側からぶち壊そうとする展開が実際の人物像とはかなり掛け離れていますが、フィクションとしては結構楽しめます。いっそオリジナルのキャラでこの話にした方が違和感が産まれなかったような気もしますけどねw  今年はゴッホ生誕160周年と言うタイミングでネタとしては非常に旬ではありますから、あくまでもゴッホ兄弟の顛末を知っている方が書いた希望的観測の物語として楽しむのが良さそうです。  この本と共に穂積さんの短編集「式の前日」も合わせて読みましたが、全体的に綺麗にまとめようとするきらいがあって、見てて少々照れ臭いところも多いです。しかし各話ごとに主役とストーリーに色々と変化を付けていて一筋縄でいかない情緒が上手いなぁ〜とも思いました。  ただ、描き分けによってキャラの雰囲気がもう少し成熟していればもっと夢中に読めたかな?「モノクロ兄弟」と言うエピソードの初老の兄弟があまりにも見た目と違う仕草や言動だったのがどうにもしっくりこなかったです。おそらく老人を描くのは苦手な方かと思われますw  話題の漫画家さんとはいえ、やはり新人は新人。しかしこの先が楽しみな新人である事は間違い無さそうですね♪
ゴッホ兄弟のお話。
ゴッホ美術館サイト http://www.vangoghmuseum.nl/vgm/index.jsp?page=12532&lang=en   『ゴッホの絵画を「チルトシフト」で撮影したら驚きの結果に(16枚)』 【 あの人の人生を知ろう~ゴッホ兄弟 】 http://kajipon.sakura.ne.jp/kt/gogh.html   『Vincent and Theo』(ゴッホ兄弟が気になる方のブログ)   『ゴッホ生誕160周年・ゴッホ美術館開館40周年を祝おう(オランダ)』