なんだろうかこの観終わった後の切なさは...まるで雲を掴むような継ぎはぎの可能性の集合なのに、ちゃんと統一した空間にストーリーが存在しているのが不思議だ。
人が化学の進歩で死から逃れる術を持った未来で、地球最後の死ぬ人間「ミスター・ノーバディ」と呼ばれる男がいた。彼の過去を誰も知らない。確かな事は、延命を望まず死を受け入れようとしていると言う事だけ。
そんな彼が、死期を悟ったかのように自分の過去を何処からか入り込んだ記者相手に語り出すのだが...
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彼の語る記憶は矛盾だらけ。一方の記憶では離婚した両親の母親の元へ、また一方では父親と暮らす事を選んでいる。その後も複数に伸びる自らの人生を、彼はまるで全て経験したかのように事細かに話すのだ。それぞれの自分に葛藤があり、出会い、別れのドラマに僕らはいちいち惹き付けられる。
カメラのぼかし方が印象的だったり、男女の興奮状態を逆立つ体毛で表現したり、何処までが事実で虚構なのか分らなくなるような、あらゆる演出が面白く、ただ突飛なだけではなく、複数に広がった人生のうち一つだけに注目しても素晴らしいディティール。使用曲のフィット感も半端ではないw
そうして拡散した全ての物語が収束する刻、きっと誰も確かな答えを出せないでしょう。ただ確かのは切なさだけが残るという事...
白黒付けたい人には絶対向かない映画ですし、また明るい映画でもありません。無性に人恋しさが心に降り積もる、そんな物悲しい作品なのです。
ただ、理屈や常識を横に置いてでも観る価値はあると思います。
僕らには、どんな可能性があっただろう?そしてこれから先どんな自分になってゆこうか?
思わずそう思い耽ってしまうような良い映画でした....
良い映画だし、去年公開した作品なのに、何故か公式HPが存在しないとか....
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