僕が小学校の卒業文集に書いた将来の夢は「サラリーマン」だった。
職種と言うには幅が広い表現だし、まだ何も始まって居ない子供の書く夢としては、あまりにも渇いている。無論本気でサラリーマンに成りたかったわけでは無く、成りたい自分が見つからなかったから「サラリーマン」以外に書きようが無かったというのが真相だ。
同級生達は絵に描いたような夢の職業を書いていたけれど、一体どれだけの人が本気で夢を叶える為に努力し、実際その夢を叶えたのだろうか?あの頃の友達とはもう20年以上会っていない。同窓会というやつからハブられていたら寂しいな.....
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さて、お金を貰い働く人全般を指して「サラリーマン」と呼ぶわけだが、”喪黒福造”のようになれるのなら、将来の夢に「セールスマン」と書くのも悪く無かったかもしれない。
世はバブル真っ盛り。やればやるほど金が入って来る時代である。来る日も来る日も働いて、稼いだ金はどんどん使い、自分を、会社を、そして国を大きくするゲームに男達は夢中。夢も希望も無い今の時代に比べれば、努力に見合う結果がちゃんとついてくる良い時代だったことだろう。しかし、バブルを生きた所謂"団塊の世代"にだって現代人と変わらずストレスはあったわけで、喪黒福造はそんなストレスを抱えた人間に近付き、彼らの潜在意識を暴走させ自滅させていく。
ある意味では確かにお客の要望に応えているのかもしれないが、かなり押し売り感が強いし、決めゼリフの「ドーン!!!」で暗示をかけているような節もあるもある。はっきり言って喪黒福造は悪魔そのものだ。しかし、彼の餌食になる連中も連中だから仕様もない話でもあるし、気持ち良いくらいコロッと騙されていく奴らを見ていると、今からでも小学校の卒業文集のなりたい職業を「笑うセールスマン」と書き直したくなるくらい喪黒福造の仕事が楽しそうに思えて来るから不思議だ。
「笑ゥせぇるすまん」が放送されていたのは、徳川埋蔵金だの宇宙人だの、ゴシップからドキュメンタリーまで幅広く特集していた「ギミア・ぶれいく」。夜9時からの2時間枠だから、親に早く寝なさいと言われ、いつも最後まで見せて貰えず、たまにしか喪黒福造の勇姿を拝めなかったが、セールスマンの名に恥じないしつこさでターゲットを追い詰める姿や声は一度見聞きしただけで頭から離れることは無かった。「おそ松さん」で鈴村氏が三代目イヤミを熱演していたが、同じように今回亡くなった"大平透"さんの代わりに誰かが喪黒福造を演じたとして、果たしてそれを笑ゥせぇるすまんだと思えるかどうか怪しいものだ。
演技の幅という点においては、それほどでは無かったかもしれないが、器用貧乏な若い世代には出せない圧倒的個性が光る役者さんだったと今にして思います。ゆっくりお休みください......
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人を試す存在が登場する作品はいつの世も廃れない。最近だと実写化も決まった「燐寸少女」もそうだ。
自分を解放したい。
でもその覚悟や度胸が無い......
そんな僕らの背中をほんの少し押してくれると言うのなら、たとえ相手が悪魔でもお願いしたいなんて気持ちも分からないでも無いよね........