待ちに待ち過ぎた「十二国記」の新作の発刊も決まり、9年振りの書き下ろしを2冊同時に出した事も記憶に新しい”小野不由美”さん。
今回はその書き下ろしの中から、実際に小野不由美さんが体験した出来事をドキュメンタリー風に語った『残穢』の方を読んでみました。
その昔小野不由美さんが”あの”名作ホラーのあとがきで、読者からの怪談を教えて欲しいと”あとがき”に書いたそうなんですが、それ以来”あの”シリーズが終わってからも読者から多くの、いわゆる恐い話が届いていたそうだ。
今作は、その恐い話の中でも、不由美さん自身が深く関わってしまい、偶然なのか、はたまた怪異のなせるわざなのか?作者自身が疑心暗鬼になってしまうような出来事に見舞われた事の顛末が記されています。
これを読めば、何故こんなに小野不由美さんの創作活動が遅遅として進まなかったのかが分るかもしれない.....w
ドキュメンタリーであるだけに、恐怖の波は穏やかそのもの。まったく霊感が無く、存在そのものを信じていない作者目線での語り口調なのだから、それも仕方ない話w 不由美さんの冷静な分析力と知識前には、超常現象も空模様となんら変わらない感じで、ただ人間には知覚出来ない現象の一つでしか無いとさえ思えて来ます。
しかし、そんな冷静さを持った不由美さんだからこそ、彼女が裏付ける事の出来ない真実が見え隠れする様が、とても恐ろしい....
一人の超常現象に戸惑う読者の相談に応え、一緒に現象の元になる『怨』を探す事になった不由美さんが出す結論.....これが地味にリアルでじわじわ来ますw
けしてオリジナルのストーリーでは無い本書は、小説と言っていいかどうか疑問だけど、連鎖してゆく恐怖の伝染力に、気付けば背筋が寒くなっている展開は秀逸。
一人夜中に読んだりすると、思わず冷蔵庫のコンプレッサー音にまで敏感になってしまうのでご注意を*1 ぶるぶる・・・←夜中に読んだ人
膨大な”人名”と”地名”が出て来るため、少々分り難くなってしまった事と、ちょっぴりくどい同じような聞き取りシーンが残念ではありましたが、派手なドキドキホラーでは描け無い味わいは一読の価値はあると思います。
土地と人との繋がりを、思わず考えずにいられない民俗学的作品とも言える良い本でした♪
*1:´д`