この本を読んでいる相田、いや間ずっと思っていたんですけど、これは森先生の経験談で自らの望む将来像ですよね?何処までが真実で、何処からが脚色なのか分りませんが、実際にお父さんは建築設計を行う工務店をやっていたそうですから、かなり実話をベースにしているのでしょう。
相田家は少々変わり者一家で、物を収集しトコトン収納に拘るお母さんや、マイペースで無口で、どこか掴みどころに困る昭和なお父さん達を筆頭に、何処か達観していて割り切った生活をしている。こんな人達周りにいたら少し面倒だなぁ、なんて僕も思ってしまうけれども、人としての根っこの部分は僕らとなんら変わらず、時々微笑ましいシーンがある以外は淡々と家族の話が続くだけで進行します。
密室殺人事件に令嬢が首を突っ込んで来たりはしないし
子供達が飛行機でダンスを踊ったりもしない
秘密結社の悪戯にも悩まされないし
勿論二重人格者だって現れない
ただし人は死にます...
自然の摂理としての死と生を描く、ただそれだけの物語。
しかしその派手さの無い淡々とした流れがとても良い。いつもの森作品らしいあっさりしてベト付かない表現と、人生をテーマにした今作は上手く組合わさったような気がします。中盤から終盤にかけてお金や老後の話になり、少し嫌な話だなぁと、思ったりもしましたが、実際に避けて通れない部分をキッチリ描いている辺りは流石ではないかとw
特に印象的なのは、ご自身の想いがかなり反映されているからか、文章の端々から非常にリアルな感情の波を受け取ると言う事。森先生も自分の今後を考えずにいられない年齢になられたと言う事でしょうかね?だいぶ角が取れて文体も優しくなったような...
どこか森先生は、そんな感情とは無縁な気がしていましたが、まだ30代の僕らでさえ、老後の心配をしてしまうのですから、50代も半ばに達する先生が将来を意識せずに生きていられるはずも無いですよねw やはり近い将来フィクションを書く事を止めると断言している先生が、こういった作品を遺す事には特別な意味を感じてしまいまいます。森博嗣と言う希有な創作作家との別れが近づいている事を想い出してしまうんですよね....
一冊新刊が出て、読み終わる。感動も大きいが、寂しさもひとしお。
人は少しづつ削れて余計な物が取れてスッキリしてゆくけど、いつかはその中心までもが消えて無くなる。終わりあって始まりがあるのだから終幕は避けられない。だから『今』をどう生きるか?そんなメッセージでもあるかもしれませんね。
森先生の新刊が読める『今』が、なるべく長く続きますように....
(´-`).。oO(しかし表紙の写真誰なの?.....